2011年08月31日

あやしい謎技術、EMさん



一度は論破済みとして捨て置いた『EM菌』というものがある。
聞き慣れない方も多いであろうこのEM菌なるものが、原発より放出された放射性物質を無効化?するという噂が広がりつつある。
原発ショック以降、ありとあらゆるトンデモ健康法が瞬間的に台頭する事は誰にでも予想できた事だし
そのような塵芥の如きトンデモ説など、熱し易く冷め易い奴らがテキトーに引っかかって、丁度いいくらいに痛い目を見るだろうから良い薬になるじゃないかと。
そしてそれが結果的に世間に「このトンデモは効果無ぇな」という認識を植えつける結果になるだろうから大丈夫と思っていた。

だから、このトンデモ説のうちのいくつかが「丁度いいくらいの痛い目」では済まない事態を招きつつあるのはおいらの予想外だった。
これはもう、ネタ提供してくれたゆこぷ氏には謝るしかない。
おいらの見立てが甘かったです。ごめんなさい。


まずはEM菌って何のことなのかをいつもお世話になってるwiki先生から引用しよう。


有用微生物群(ゆうようびせいぶつぐん、EM、Effective Microorganisms)とは
1982年に琉球大学農学部教授比嘉照夫が、農業分野での土壌改良用として開発した微生物資材の名称。
乳酸菌、酵母、光合成細菌を主体とする微生物の共生体とされ、農業、畜産、水産、環境浄化、土木建築など様々な分野に利用されている。
Effective Microorganismsとは「共存共栄する有用な微生物の集まり」の意味の造語。通称 EM菌。



ついでに開発者による説明も紹介。


自然界にある(乳酸菌群、酵母群、光合成細菌群から嫌気、微好気の複数の有用な微生物を集め培養し、液中に複合共生させた資材。
また、悪玉菌や遺伝子組替技術によって作出された微生物は使用していない。
商品としてEM1、EMW、EMX-GOLD(飲用)、EMセラミックスなどがある。
微生物環境(微生物相)では、酸素の多い現在の大気中において酸素を使って有機物を分解する(酸化)微生物の勢力の方が強い。
この酸化分解はほとんどの場合、腐敗、腐蝕という環境悪化を招いている。
そこへ抗酸化力の強い有用な微生物群(EMを投入することで発酵、蘇生など生分解型の善循環へ変化させることができる。


引用ここまで。


EM菌が本当に人畜や環境そのものに対して無害であるなら、これ程素晴らしい手段は無いだろう。
ヒトが長年かけて汚染したものをリスクゼロかつローコストで元に戻しちまおうって話だ。
土壌に住む微生物の働きによって土壌改良やゴミ処理を行うという考え方自体は現代においても重要な研究課題であって、この考え方や目指す所自体はおかしなものではないはずだ。
しかし、現在における「EM菌」は、これはもうニセ科学そのものになってしまっている。
一体どこで道を誤ったのだろうか。


1、そもそもの大間違い

この比嘉照夫とかいうおっさん、そもそも前提からして間違っている。
おいらはさっき「土壌に住む微生物の働きによって土壌改良やゴミ処理を行う」という考え方には賛意を示した。
比嘉氏の研究は、最初こそこの理念に基づいたものだったのだろうなとエスパーするが、これと「EM菌」とは本来真逆の相対する考え方に近い。

何が違うって、EM菌団子として人為的に配合された菌は、その土地、その土壌には本来存在しない菌だ。
そんなもんいくらバラ撒いてもあっとゆー間に自然淘汰されるのは目に見えているが、むしろその方が良い。
一番マズいのは、本来いないはずの菌がその環境に適応して繁殖してしまった時だ。
菌というものはその環境の根本的な所にとても大きな影響を与える。
だからこそ環境そのものを改善する選択肢に上げられるのだが、それはもともとその場所に住んでいた菌によって行われるべきものだ。
そこにいない菌がその環境に適応して増殖してしまったら、そこに形成される環境は本来とは全く異なるものとなる可能性が高い。
おいらの認識が正しければ、人それを環境破壊と呼ぶはずなのだが。


2、間違いは連鎖する

まあ、根っこの基盤が大間違いなもんだから、そこに積み上がった理屈も全部間違いである可能性が高いんだけど。
まず、これだけの種類の菌をごく限られた体積の「団子」に共生させる事自体が疑わしい。
というか、基本的に不可能だよーという反証実験結果しか出ていない。
成功事例もあるにはあるが、それは河川や土壌にバラ撒くのではなく「共生を成功させるためだけ」に選択された菌の寄せ集めのケースだ。
そもそも菌なんて自分が住みやすいように環境を作り変えるエゴイストなんだから、共存なんて考えからは程遠い生物だ。
自分が住むのに適した環境=他の誰かが住むのに適さない環境であれば、むしろ菌にとっては万々歳。
喜んで環境を造り替え、他の菌を淘汰することだろう。
共生させる事に成功したと抜かす阿呆は、一体どれくらいの期間共生していることを確認したのだろうか。
そして理想状態でEM菌が環境の改善に要する時間ってーのはどのくらいの期間なのだろうか。
さらに、EM菌を住まわせる団子はさぞ菌類にとって居心地が良い団子だろうなぁと思うのだけど
その団子自体が河川や土壌を汚染している事にはいつになったら気付くのだろうか。
ちなみにこの団子には約2%のリンと約7%もの窒素が含まれているそうだ。
これらの物質は川の流れ込む海において富栄養化を招き、すなわち赤潮の原因となることは言うまでもない。


3、いつしか広がる大風呂敷

同時に比嘉氏は「食料問題や環境問題が解決する」という言い方もしている。
土壌改良によって生産効率を上げたり、農業に適した土地を増やす事による結果なのだろう。素晴らしいことだ。
実際には土壌改善の兆しは見られていない事を除けば。
目処が立っていて、あと必要なのは時間と人手と資金だけ!というのであれば、こういう風呂敷はどんどん広げてスポンサーを見つけるといい。
最悪、ゴールへの道がぼんやりとしか見えてないのであっても、道が見える可能性があるのなら投資価値を見出す人もいるだろう。
しかし、空想のゴールだけ提示してそこに至る道が影も形も見えていなかったり
またはその道が間違っているという結果が出ていても尚、その事実を無視してカネを貰おうってんならそいつは詐欺ってもんだ


4、そして類は友を呼ぶ

比嘉氏が波動や水の記憶、ホメオパシーなどを信じていることを公言している時点でアタマの出来の残念さは推して知るべしだが
他にもEMの安全性は磁気共鳴分析器(?)なる波動測定器(笑)によって確認されているとか
EMの波動の正体は重力波だとか、もうこのおっさん博士号剥奪しちまえと言いたくなるほどオカルトまみれだ。

まあお化けを多少なりとも信じてるおいらが言える事じゃないかもしれんけど
それでも、そんな不確定事象を科学の範疇に持ち込まない節度くらいは持って欲しいもんだ。
メリケンの毛党どもなんか立派じゃねぇか。
神の2、3匹くらい軽く消し飛ばす核実験を何百ダースとやって、地球を宇宙から眺めて、限定条件ながらも光速を超えて。
ついでに神様がお創りになられたニンゲンの設計図を全部解読しちまってなお、ほら神はそこにおわしますってなもんなんだから。
いい大人が大真面目に正義だの悪だのヒーローだのを恥ずかしげも無くやってる国だし、こんなダブルスタンダードくらい朝飯前か。


5、なんかもう万能でいいや

比嘉「EMの産出物を濃縮したEM・Xは強力な抗酸化作用によって人間の自然治癒力を高めるよ!
生活習慣病!アトピー!果てはガンにまで効くよ!万能EM万歳!!」


なわけねーだろ阿呆。
こういう無駄にマルチに手を広げて、専門分野外で墓穴掘るヤツ見るといつも思うんだけど
ちょw波動がwwとか重力波がwwwとか言っちゃうくらい理解力ねーなら、何かよく分からん分野へのコメントなんてしなければ良いのに。
「あ、おいらの専門そっちじゃないんでサーセンww」くらいの事、どうして言えねーんだ。
万能なんて有り得ないんだし、それ見て笑う下衆なんて一生笑わせとけよ。
それに専門分野外にまで手ぇ出して火傷するようなヤツって決まって、専門分野でも大したことないんだよな。
逆か?専門分野で行き詰まって頭打ちだから別分野に手出すのか?
それって結局どっちの分野でも使えねーゴミ野郎ってだけなんだけど、それじゃあ嫌なんだろうな。
センセイって呼ばれて尊敬の眼差しを集めなきゃ生きられないくらいプライド高いのって、生きてて疲れないか?

とりあえず、波動を口にするヤツのアトピー、ガン論ほど見るまでもなく結果が読めるものもなかなか無いだろうね。



これが、おいらが語るに及ばずとして捨て置いたEMだ。
原発騒ぎが起きるまでにEMが辿っていた流れはこんな感じ。
自分でおっ広げた風呂敷で勝手に窒息して死にそうだったので、わざわざ叩くまでもねーだろうなぁと思っていたのですよ。
それが原発事故によって新しい活路を見出しやがったと言うか、放射能を無効化だとか言い出したんだよね。

まずは参考記事をどうぞ。
http://emdiary.seesaa.net/category/7724178-1.html
このサイトを選んだのはグーグル先生が一番上に生け贄として差し出してくれたからってだけで他意はないからね。
こんなもん推奨してる時点でどいつもこいつも等しくクズである事に変わり無いんであしからず。

この記事によると必要なものはEM1,黒砂糖,ペットボトル1.5gか2gを2本,米のとぎ汁をボール2杯にミネラルを含む岩塩(?)
紹介するサイトによっては米のとぎ汁ではなく米ぬかを推奨している記事も結構ある。
EM1ってのはEM菌を商品化したもんだね。
手順は省くが、要はこれらを混ぜ合わせて常温に保つことでEM菌を増殖させた液体を造り、これをお掃除に使ったり
「人体に無害」という特徴を挙げて飲食物、果ては食用にまで使えば放射線の害を免れるというのだから酷い話だ。

まず発酵物を技術を持たない一般人が造る上での安全管理について。
一番近いのはアルコール発酵において酵母菌が自身の住み易いアルコールを造り出し、環境をアルコールに置き換えることで、その他の菌の繁殖を抑えてしまう状態をイメージして欲しい。
これが成功例で、お酒を造る時はこれを利用する。
しかし発酵と腐敗は紙一重どころか同じ現象だ。
人間に都合のいい状態になれば発酵で、都合が悪い状態は腐敗と呼ばれる。
ちなみに紹介したサイトによると、発酵は「においを嗅いで臭くなければ成功」というとてつもなくアバウトなものだ。
臭くなければ成功なんて程度のザル安全管理をする人種が、そこら中に生えてるカビの胞子やありもしない放射性物質ごときを恐れるんだから世も末だ。

そしてヒステリー馬鹿共が恐れる微量放射性物質について。
福島第一原発を中心として放射性物質が飛散し、あらゆる野ざらしのモノの表面に降り積もったことだろう。
これは覆しようのない事実だが、問題はその後。
過去に書いた通り、チリが降り積もった野菜なんざチリを洗い落とせば問題無い。
そして現在確認されている事実を鑑みれば、水銀やカドミウムと違い放射性物質は生態間で濃縮される事はないのだから、きっちり洗い落として食うぶんには問題無いのだ。

しかし、製造または調理過程で洗わないものも存在するだろう。
その代表格こそが、まさにコメだ。
コメを濡らしなんてしたらあっと言う間にカビて使い物にならなくなる。
よって、収穫されたコメは家庭において研がれるそのギリギリまで、適度な乾燥状態を保たれるものだ。
それでも、ちゃんと研いで食うならたとえ福島のコメだろうが安全だと断言してやらぁ。
何がいけないかって、コメのとぎ汁だ。
穂に実ってるコメに放射性チリが付くんだから、リスクがあるとすれば一番外側の籾殻だ。
当然これは脱穀過程で取り除かれるものだから、次にリスクがあるのは玄米
そしてさらに精米し、外側を削り取ったものが白米だ。
白米まで来ればもうリスクなんてあっても取るに足らない無視できるものだろうが、厳密に言うのであれば白米においても一番リスクが高いのは一番外側
そしてこの外側を最後の最後で研ぎ削り取る作業が洗米なのだが、不思議な事にEM馬鹿どもはわざわざ白米において一番リスクの高い液体を使いたがる。
あまつさえ、米ぬかなどという白米の外側よりもさらにリスクの高い部位を指定する阿呆までいる始末。
放射性物質の生態間濃縮は無いと書いたが、この作業こそが本来は微量なはずの放射性物質や残留農薬をかき集めて濃縮する作業に他ならない。
放射性物質の持つ放射能を怖がる人間に限ってこんな事にさえ気が回らないのだから、実に皮肉な話だ。

ちなみに、これを空気中に噴霧するだけで空気中の放射線量が限りなくゼロに近付き
放射線地獄(原文のまま)の中でも生きていける
そうなのだが、どのような条件いおいての計測なのかが明示されておらず
そもそも論として確立させる事を避けているようにしか見えないので、おいらとしても否定のしようがない。
考えられるとすれば本当に子供騙しな事だが
放射線を放出するのは空気中の放射性チリなので霧を吹きかければそんなもん地面に落下するし、そしてら線量下がるのは当然だろボケがってなもんだ。


比嘉氏は論をさらに発展させ、地面そのものに降り積もった放射性セシウムをもEMによって除去できると抜かしていやがる。
しかし残念ながら、今この時点で記事容量が11KBを示している。
1KBあたり約500文字なので既に5000文字以上の長文なのに、どうもこの大ウソを否定するには文字数が倍以上に膨れ上がりそうだ。

比嘉氏が詐欺風呂敷を目一杯広げようと発進した一世一代の大ウソを、長文になることを気にしながら否定してしまってはおいらとしても不完全燃焼だ。
一番美味しい部分を叩くのは次回にまわすことにする。

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posted by 猫耳将軍 at 21:27| Comment(9) | TrackBack(0) | エセ科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
取り上げていただき嬉しいです。
Twitterあたりで原発事故後どんどん出てくるナンチャッテ放射性物質除去方法の中で根強く残ってるのが不気味ですね。
その作った汁を噴射して吸うなんて、肺炎さんカモーンな気がします。
めった斬りを楽しみにしています。
Posted by ゆこぷ at 2011年09月01日 20:10
私の母もハマりそうでした
幸い、異常発酵したようでとてつもない臭いを放ち出したそうで、しょんぼりしながら全て捨てていました
なにかを怖がるのにも正しく怖がる知識が必要なんですね
Posted by マユボウ at 2011年09月02日 11:37
あれ?これって福島県が公式にやめてくれっていう声明発表してなかったでしたっけ?
Posted by キングス at 2011年09月02日 15:25
>>ゆこぷ氏
トンデモ科学の栄養は恐らく、パッと見の科学っぽさと実践のし易さだけです。
これだけあれば、あとは勝手に拡大解釈して自生してくれます。
ペンペン草と同じで一度広がった根を完全に根絶するのは難しそうです。
Posted by 猫耳将軍 at 2011年09月05日 18:27
>>マユボウ氏
>なにかを怖がるのにも正しく怖がる知識が必要なんですね
まったくもってその通りだと思います。
事実に沿わない点を勝手に懸念し、ヒステリー起こす事で実体のない疑念を生む。
そしてその疑念はもともと実体が無いのだから自然消滅は望めず、50年100年と残留します。
ありもしない幻想に惑わされ、本当にそこにある危険に注意を払わない。
その様はキチガイそのものです。
Posted by 猫耳将軍 at 2011年09月05日 18:31
>>キングス氏
いえっさー、その通りです。
その件に関しては次回の内容に対するレスポンスなので、次回で紹介します。
Posted by 猫耳将軍 at 2011年09月05日 18:32
初めまして。
鉢植えにEM菌を使ってみようかと思い、EM菌について調べている者です。
否定派の方々のご意見はどれも客観的事実に基いたものばかりである一方、肯定派の意見はどれも「〜だと思う」とか「〜のはず」ばかりで
これは眉唾ものか?と思うようになってきました。

しかし、肯定派の意見を見ると植物に対して何らかの増強作用があるであろう事は客観的事実として読み取れるように思えます。
猫耳将軍氏にお聞きしたいのですが、安易に発酵物を使用する事が危険である事は理解した上でその問題とは別に
EM菌が植物に対して与える有用な影響も否定できる、または無視できる程度のものなのでしょうか?
いえ、そんな高尚なお話ではないので、もっと正直に質問します。
私がトマトやナスの鉢植えにEM菌なるものを使ったと想定した場合に起こり得るメリット、デメリットはどのようなものが考えられるでしょうか?
Posted by 空想坊主 at 2011年09月08日 11:39
>>空想坊主氏
肯定派、否定派双方が提示するデータには植物の生育や収穫物の量に関するものも含まれています。
(と言うか、本来のEM菌の用途はそれだったはずなのですが・・・)
どちらのデータも植物の育成に関してはプラスに働くという結果も出ていますので、鉢植えに限って言うならばEM菌はある程度のメリットはもたらしてくれるのではないかと思います。
わざわざ「鉢植え」と限定して範囲を区切ったのは、畑のような外環境との仕切りが曖昧な場所でEMを使ってしまうと享受するメリット以上に畑より外の環境に与える影響がまだ計り知れないためです。
要約すると、自分の箱庭に使うのはOKですが、僅かでも公共性のある場所に使うのはアウトだとおいらは考えます。
Posted by 猫耳将軍 at 2011年09月09日 15:21
そんなイライラしてたら
頭ハゲるよ?

それが心配。
Posted by ね。 at 2016年05月13日 23:54
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