2011年12月03日

泥酔した人間の相手って、美少女でもお断りだわ。


『毒と薬は紙一重』という言葉がある。
生まれこそ漢方思想だが、むしろ日本人の方により受け入れられている感のある言葉だ。
しかしおいらはこの言葉を聞くたびに「違うだろ」と感じてしまう。
それは『毒と薬は同じもの』だからだ。

いくら適材適所を適時適当に適用しても、薬とは望まぬ作用を体にもたらすものだ。
それが薬の本質であり、正しく薬であろうとすればするほど同時に毒ともなる
いっそ薬効など捨ててしまえば同時に毒としての作用も消えようが、何とも矛盾した話だ。

何でこんな哲学チックな始まりになってしまったかってーと。
新しい店!アブない薬の買い方する奴が多すぎる!
一日一本毎日ナザール点鼻薬とか。
一ヶ月に一回の特売時に毎回ノーシン100包を5コずつくれとか。
ユンケルを一ヶ月に150本消費するとか。
風邪でもねーのに毎食後、予防(笑)のためにパブロンゴールドを飲んでるとか。
ぶっちゃけキチガイの所業だ。

そしてそれを今まで当然のように受け入れて来た担当者には殺意すら湧く。

まあいい。
こと医薬品に関して薬事法はそのような買い方を許してはいないけど。
まともな人間には有り得ない用法だけど、特売の時にまとめ買いする奴はどこにだっているし、全く考えられない事でもない。

だが昨日、ついにそういったレベルを超越した猛者が現れた。
第一声からして「酒に混ぜたら酔いが早くなる目薬って、ない?」だ。
おいおいド真ん中ストレートかよと思いつつも、そんな目薬は置いてないのは本当なので丁重にお断りするのだけど、聞き入れない。
「いいやあるはずだ!隠してるな!上の人間を呼べ」と来たもんだ。

『うるっせーし臭っせぇんだよハゲオヤジ。おいらもテメェみてーなキチガイの相手好きでしてんじゃねーよ。でも薬に関して店舗の最高責任者はおいらなんだよ。店長なんざお呼びじゃねーの。分かる?
で、接客態度やサービスに不満があるっつーならまだしも薬の知識に関しておいらで不満があるなら、後はテメーで調べて貰うか保健所が出て来なければなんねーんだけどどうするよ?
目薬を目に使わねー方法を目的とした時点で買わなくても薬事法に引っかかってるんだよ。起訴は無いだろうけど、もし公僕出てきたら痛てぇ思いすんのはテメーの方なんじゃねーの?
だいたいそんな目薬あったとして誰に使うんだよ。まず異性同性関わらず酒の一杯も付き合ってくれる相手を探す事自体が最難関クエストに見えるんですけどwww』

ってな内容のお話をオブラートに包んでお話してお帰り頂く。
どの部分を口に出して、どの部分をオブラートで隠したかは想像に任せる。
同日に20キロほど離れた同系列の店にもそのおっさんと思しき男が現れたらしく、笑い話として電話がかかってきたのが今日の話。
風貌その他を保健所に通報するというめんどくせー仕事はそっちの人に任せる事にした。


それにしても目薬で泥酔、お薬に関する噂ではわりと有名な方なんだろうか。
昏睡するだろうなーという目薬なら無い事はない。
そんな目薬は確かに存在「した」。

恐らく元ネタはマルツエキスという成分だろう。
ロートという植物から抽出した神経麻痺剤で、これが確かに昔の目薬には配合されていたらしい。
ロートとは莨菪と書き、別名ハシリドコロ(走野老)、キチガイイモ、キチガイナスビとロクな名前が付いていない辺り、どんな毒かは想像に難くないだろう。
主に根と実の表皮には副交感神経を麻痺させる毒を含み、同じような毒を持つものとしてはチョウセンアサガオ、ベラドンナ、ツツジ、トリカブトなど有毒草の代表格がズラリ。
チョウセンアサガオと言えば知っている人には医薬品的な使い方としては麻酔薬のはしりとして有名か。
JINの佐分利が華岡流と称して曼陀羅華(チョウセンアサガオの別名)と鳥兜を主として麻酔薬を作っていたが、この華岡とは華岡青洲のことだろう。
この麻酔薬を使って、記録上としては世界で始めて全身麻酔による乳癌の手術を成功させた人として有名な実在人物だ。
使い方を誤らなければどうってことないけど、そんな成分が、昔の目薬には入っていた。
今となってはどれだけの量が入っていたかは分からないので、何滴酒に混ぜれば良かったのかは分からない。
でもアルカロイド系の成分って事は苦いはずなんだよな。
酔い方に影響するほど混ぜたらバレそうなもんだけど。

確かにロートエキス配合の目薬は無いだろうけど、似た成分を含む薬なんざごまんとある。
おいらも過去の記事の中でもコレが含まれる商品を紹介た事があるくらい、フツーの成分だ。
少し詳しい奴がちょっと手を加えれば目薬なんかより遥かに高濃度でずっと持ち運びしやすい状態にだってできる。
でも真似する事はお勧めしないぞ。
別に倫理だの法だの野暮ったい理由からじゃない。
単純に、めんどくせーんだ。

まず、そこまでして酔わせるのがめんどくせー。
それなら美味い酒なり電解質なり混ぜてやったほうがよっぽど手っ取り早い。
次に使い方がめんどくせー。
どんだけの量を混ぜたらどんだけの酔い方するだなんて、分かる奴いねーと思うよ。
そもそもアルコール分解能力に個人差があり過ぎるんだから。
酔わせた後もめんどくせー。
最初に書いたけど、この方法でなるのは「泥酔」じゃなく「昏睡」だ。
バッチリ効いても熟睡。
ガッツリ効いちゃったら昏倒で救急車。
どっちにしても最終目的であろう「お持ち帰り」には程遠い。
最後にバレたらめんどくせー。
毒物及び劇物取締法 第三条の三に抵触し、三年以下の懲役または二百万円以下の罰金となる。
こんだけのリスクを犯してまで上手く効くかどうかも分からん薬使うとかどんだけいい女だよと。

これだけの労力とリスクを負うなら、まともに落とした方が色んな意味で建設的だと思うんだけどなぁ。

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今の時代、酔わせて相手をどうこうって考え方自体がナンセンスだよなぁ。
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posted by 猫耳将軍 at 14:47| Comment(8) | TrackBack(0) | お薬もろもろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これぞ猫耳将軍さんの本領発揮ですね。
私の薬局にも、似たような患者様が時々いますよ。適応外処方と言うよりは、『それはダメでしょう』と言う患者様。マスカラ代わりに緑内障の点眼液を欲しがったり、風邪予防にPL顆粒を欲しがったり・・・一応、保険制度を説明して丁重にお帰りいただいてはいますがね。そういった方ほどお話が長くて、日常業務に差し支えるんですよね。ときどき切れそうになってしまいます。

今回の点眼液のお話、それだけの財力や粘り強さがあれば、そんなことをしなくたって女性は口説けそうですがね。
お酒をこよなく愛する私としては、アルコールと言う薬物の使い方が間違っている!って言いたいです。
Posted by ネーヤ at 2011年12月03日 17:21
猫耳さんならその気になれば売ってる薬を使って媚薬毒薬何でも作れそうで怖いですわー
普通の薬屋さんでもそういうイメージがあるんですけど、実際のところやるかどうかは別としてそういう事はできるものなんですかね?
パブロンとベンザブロックを特定の比率で配合してスゲー薬ができたぜ!みたいな
Posted by 匿名希望たなか at 2011年12月04日 15:28
このお仕事を神聖視するつもりはないんですけどきっと私もそのお客様には敵意が顔に出ちゃいそうです
うちの店長は「年をとればそういうのもうまくさばけるようになるさ」と言っていましたけど、そうなってしまう事を成長と呼ぶのはどうしても納得がいかない気持ちです

>匿名希望たなかさん
横からレスしちゃいますが、まずごく一般的な薬コーナーに立ってる私どものような凡人と猫耳さんを同格で比べられると、私のプレッシャーすごい事になります
私や私の知っているお薬コーナーに立っている人を普通の人と数えていただけるなら、たぶんそういう普通の人は法律を抜きにしてもできないと思いますねぇ
少なくとも登録販売者のお勉強の中ではそういった悪さができるような内容の勉強はなかったです
ただ、繰り返しますが猫耳さんも登録販売者とのことですが完全に枠外の人です
今回の記事だけ取っても毒草とかアルカロイドとかそれが苦いとかいう話なんか登録販売者の範囲外です
猫耳さんならやれちゃいそうというのには私も激しく同意します

でも本当はそういう作業ってたしか調剤とか調合とかそういう分野のお話ですよね
だったらここで言うなら薬剤師であるネーヤさんの本分な気がします
Posted by マユボウ at 2011年12月04日 17:52
あらぁ〜、ここで私の名前が出てくるとは(汗)
スレ汚しで申し訳ないですが、ここで私の意見も述べさせていただきますね。
先ず、毒薬と言うものは処方薬では有りますが、媚薬云々と言うものは存在しないです。とは言え、麻薬や覚せい剤であれば可能かもしれませんが、その用法・用量はさすがに薬剤師国家試験でも出てこなかったですね(笑)
それと、今回のブログに出てきた女性を悪酔いさせてお持ち帰りをしたいと言う事であれば、何もそんな目薬なんて眉唾なものを使わなくても、今の世の中、ネットで調べればいくらでも出てくるでしょうね。でも、お薬を飯のタネにさせてもらっている人間としては決してやってはいけないことでしょうね(もちろん、一般の方がやっても違法行為ですが)
それに、猫耳将軍さんが解説してくれているように、リスクが高すぎますね。猫耳将軍さんは最後までは書いてありませんでしたが、1つ間違えば女性が死亡することも十分ありえることだと思います。
Posted by ネーヤ at 2011年12月05日 00:16
>>ネーヤ氏
昔の人はベラドンナの散瞳作用を瞳を大きく見せるために使っていたとか。
それを考えればある意味適性使用ですなww
小学生の頃メガネを作る時に使ったことがあります。
メガネの度と使用感を確認するためにその状態で二時間外出するという拷問付きで。
今思えば瞳孔開いてる状態で度も使用感もへったくれもあったもんじゃねーだろって話です。
あの眩しさは個人的に二度と御免です。

酒への拘りは人それぞれでしょうが、飲ませる、飲まれるような酒の使い方はこれまでもこれからも納得できそうにないです。
Posted by 猫耳将軍 at 2011年12月05日 10:34
>>匿名希望たなか氏
あー、おいらも薬屋さんにはそんなイメージを抱いてました。
でも実際に自分がなってみれば何てこたーない同じスペックの人間なんで、そこまですごい事はできないですよ。
・・・普通の薬屋さんは。
おいら?
やった事は無いから机上の空論ではあるけどやり方は知っているとだけ。
興味はあるけど「いざやってみよう!」と思い立って買う、準備する、時間を割いて実行する、という風に色んなモノを消費してまでやろうとは思わないわぁ。
Posted by 猫耳将軍 at 2011年12月05日 10:43
>>マユボウ氏
おいらもムカッと来たら顔と口調に出て、さらに客を怒らせるタイプなんで良くわかります。
おいらの場合、根底に「こんなクズ客じゃねーし二度と来てくれなくてもいい、死ね」という傲慢さがあるので余計にです。
小売業には向いてないっすねー。

代わりに答えて頂いて感謝ですが、「登録販売者の範囲外」という考え方は勿体無いです。
いや、今回の場合マユボウ氏は「登録販売者試験をパスしたレベル」の話をしてくれているからだというのは分かっているのですが、自分の限界を(作るのではなく)悟ってしまった「終わった人間」ならばともかく、まだ始まったばかりのマユボウ氏がその考え方をしてしまうのは非常に勿体無い。

実例を挙げましょか。
教科書によると、二歳に満たない幼児は内耳の機能が出来上がっていないため乗り物酔いは起こらないとされています。
そのため、二歳未満に適用のある酔い止めは発売されていないはずです。
しかし実際に現場に立ってみる、または親になってみると、どう考えても子どもが車に酔っているとしか考えられない例は確かにあるのです。
教科書の話を限界にしている人間だったら、このケースではどのような対応を取るのでしょうか。

正解とは言いませんし「正しい薬屋」としても模範から大きく外れる行為ですが、おいらは自分の子がこのような状況に陥った時は鼻炎薬シロップを与えます。
もちろん鼻炎薬シロップに「乗り物酔い」の適用はありませんので、客にはこのようにはいきませんが。
ですが、鼻炎薬シロップとは何であるか?という化け学及び商品知識と、乗り物酔いとはどのような症状でどのような原因によって起きるのか?という知識さえあれば、まあ鼻炎薬でも効果は見込めるという考えに至るはずです。
最悪、酔い止め効果が出なくても眠らせちまえばおkという考え方もできます。

登録販売者をパスしただけのレベルは確かに知れています。
でも、リンコデなり目薬なりを悪用する考え方は「登録販売者の範囲内」ですし、毒草なり薬の味なり、果ては放射線とは何ぞや?TPPとは何ぞや?という話も、おいらは「薬屋の仕事の範囲」だと思っていますよ。
Posted by 猫耳将軍 at 2011年12月05日 11:43
>猫耳さん
うぐぅ。全くもってその通りです、ハイ
どこかで「ここまでが自分がやるべきこと」という線引きをしていたんだとおもいます
激しく反省しました

ネーヤさんもわざわざレス下さってありがとうございます
Posted by マユボウ at 2011年12月07日 15:24
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