2012年03月30日

消毒薬、あるいは全く別の何か。


今回紹介するのは小林製薬より発売されている『新キズドライ』という商品だ。
消毒薬なのにパウダースプレーになっており、なかなか斬新な商品ではあると思う。
成分量としては100g中に

イソプロピルメチルフェノール(消毒成分) 0.15g
ジブカイン塩酸塩(麻酔成分) 0.045g
アラントイン(組織修復成分) 0.15g
添加物としてベンザルコニウム塩化物、ゼラチンを含有


と記載されている。()内は猫耳補正
小林製薬のホームページによるとこのキズドライは

「ジュクジュクした傷口にスプレーするだけで、スリ傷、キリ傷などの浸出液を吸収してサラサラにする殺菌消毒薬」

だそうだ。
さらに製品特徴としては

・刺激が少なく皮ふにやさしい優れた殺菌力を持つ殺菌消毒剤「イソプロピルメチルフェノール」が傷口を殺菌消毒し、化膿を防ぎます。

・局所麻酔剤「ジブカイン塩酸塩」が痛みを鎮めます。

・「アラントイン」の創傷修復作用により、創傷麺の皮ふ形成を促進し、傷の治りを早めます。


と書かれている。


前置きはここまで。
おいらはこの商品に大きな恨みを抱いている。
この商品が発売されたのは、忘れもしないおいらが小学生の頃の夏休み・・・だからたぶん二十年前だな。
チャリで転んで膝に2センチくらいの石が刺さり込んだ時に親が買ってきたのがコイツだった。
今思えば親子揃って無知もいいとこだが、乾燥させるパウダーの消毒薬としてCMが流れまくっていたので特に疑いもせず使ってしまった。
だから、これは机上論やカタログスペックではなく、実際の使用感だ。


キズドライを使用したのはコケた翌日だった。
傷口に入り込んだ泥や砂粒を歯ブラシでこすり出したために傷口は無残なものだったが、特に炎症や疼痛も無く、純粋に傷として痛いだけだった。
前日に使ったマキロンで既に痛い思いはしていたが、まさかそれ以上の痛みはあるまいと高をくくっていた。
まったく、今思えばダチョウ倶楽部も真っ青の前フリと死亡フラグだ。


     とにかく、痛ってぇ!!


マキロンなんか比較対象にすらならない。
間違いなく、転んだ時よりもスプレーした時の方が痛い!
痛さ比較をすると

キズドライ>>>>>傷口をブラシでゴシゴシ>>>負傷時>マキロン

想像できるだろうか。
膝に2センチ程の尖った石が刺さり込んだ時以上に、その傷を歯ブラシでエグる時以上に痛いんだ。

恐らく痛みの原因は三つ。
一つはパウダー成分そのものが浸透圧差によって傷口の細胞から水分を奪う時の痛み。
一つは消毒成分であるイソプロピルメチルフェノールが傷口の細胞を焼き殺す痛み。
最後の一つが麻酔成分であるジブカイン塩酸塩の正当な効果

上の二つは素人でも理解できるはずだ。
薬品で焼き殺されて痛みを感じるのは当然の事だし、浸透圧の働きがピンと来ないのであれば傷口に塩を練り込んでみれば同じ結果が得られる。
三つ目の麻酔が痛みをもたらすという話だが、局所麻酔薬は直接傷口に塗りこむと神経を刺激し、強烈な痛みを誘発する
麻酔科の専門知識どころか、看護学校の教科書にすら書かれている当然の事だ。
だから局所麻酔薬は通常傷口には使わないはずなのだが、 な ぜ か 傷に散布するはずのキズドライには配合されている。

「傷って痛いから麻酔薬使えば良いんじゃね?うはwwwおれ天才www」

などという寝言は素人にのみ許される話だ。
それを腐っても一介の製薬会社が商品にしたならば、その製薬会社は素人とイコールであるという事だ。
パウダー、消毒薬、麻酔薬、アラントインという四つの要素のうち、実に三つまでもが使用者を苦しめるだけで傷にはむしろ逆効果の配合となっているこの事実。
あれ?アラントインだけ軟膏で塗ればいいんじゃね?と今でも思う。
そのアラントインの組織修復効果も眉唾もので、ぶっちゃけあってもなくても傷の治りに影響するとは考えにくい、その程度の成分だが。

さて、一回目のキズドライという神の試練を乗り越えた幼き日の猫耳だが。
このクソ薬の弊害は早くも翌日に現れた。


      やっぱり痛てぇ!!

もうね、目が覚めると同時に痛てぇの。
ガーゼはがして傷口を見るまでもなく周囲が腫れてるし、触らずとも熱を持ってるのが分かる。
傷を負った次の日、つまり昨日よりも明らかに状態が悪化してた。
ガーゼを剥がすとベトベトした膿なのか水分を含んだパウダーの黄色なのか分からないモノがグチョッとなっている。
石が刺さった場所は昨日はクレーター状になっていたが、そのクレーターをキズドライが埋めていて、傷の周囲が腫れ上がっている状態だ。
とりあえず起きて風呂場に直行し、ぬるま湯で落ちにくいパウダーを洗い流した直後、明らかに炎症が和らいだ。
これにより、二日目早朝にして確信を持つ。

「あれ?キズドライって、害にしかなってないんじゃね?」

まだ湿潤療法のしの字も知らなかったし、依然消毒は外傷に有効という固定観念も持ってはいたが
とりあえず「このキズドライはロクなもんじゃねぇ」という直感は働いていた。
残念ながらわずか一日キズドライを使用してしまったために傷は化膿と酷い炎症は起こしていたが、キズドライの使用を取りやめた以降は順調な回復を見せてくれた。


医学的、身体構造的知識が全くない小学生であっても経験からこの程度の憶測は導けるという事だ。
この事例を申し訳程度の薀蓄を備えた現在のおいらが考察するとこうなる。

まず今となっては当然の常識であるが、傷に消毒は必要ないという事。
通常の消毒薬ですら組織の破壊を促し再生の妨げになるものだが、このキズドライはその再生の妨げになる消毒成分がパウダーとして付着するために長時間傷口に留まる事になる。
同時に、わずか一晩のうちに発赤と疼痛、化膿を起こしていたという事は、キズドライによって殺された組織は雑菌の繁殖にはもってこいの環境であるという事を現している。
つまりキズドライとは、第一陣で持続性の表皮破壊成分として働き、第二陣の雑菌によって完全に感染を確立させる。
二段構えで確実に傷を悪化させる事に特に優れた医薬品と言える。

そしてパウダー成分。
添加物から察するに、このパウダーの主成分はゼラチンであり、ゼラチンとはコラーゲンを抽出したものであり、つまりはタンパク質だ。
要するにキズドライは傷口にタンパク質を貼り付ける商品だという事になる。
消毒薬によって破壊された微量の皮膚組織ですら感染を助長する起爆剤になるというのに、追加のタンパク質を傷口に付着させ、雑菌の餌にして
あまつさえその浸透圧の働きよって体の持つ免疫反応を妨害する。
全くもって小林製薬の雑菌に対する博愛精神には恐れ入る。
願わくば、そのようなゴミの外装に「殺菌消毒薬」などというフレーズを記載しないて頂ければなおよろしいのだが。

さて、それでもどうしてもこのキズドライを傷に使用したいという変態もといドMもとい雑菌愛好者も世の中にはいないとも限らない。
ノーマルを自称するおいらには全くもって度し難いことだが、そのような「小林製薬の科学力は世界一ィィィィィ!」という変態は止めてもキズドライを使うかもしれない。
そこでおいらは一応の線引きを設けた。
それは

  『キズドライをありとあらゆる傷には使用しないこと』

これだけだ。
たったこれだけの事で自身の異常性癖を満たせるのだから、世に理解されない変態共には安いものだろ。
どれだけ浅い傷であっても真皮に到達する傷であればたちどころに組織を破壊し、感染に導くのだから真皮には絶対触れさせてはいけない。
であるならば、真皮に到達しない≒出血や浸潤液の伴わない傷に使えば良い。
さっすが猫耳、今日も冴えてるね!
キズドライのパッケージ絵では明らかに出血してる傷に噴射してる
4987072005927.jpg
けど、そんなのイメージ図だよね!
効果・効能には「きり傷、すり傷、さし傷、かき傷、靴ずれ」とか書かれてるけどそんなことなかったぜ!!
そんな真皮に届かない傷なら通常はまず感染の可能性は無いけど、キズドライを使うことで感染しちゃうかもしれないけど、そこは自己責任だぜ!


製品のネーミングセンスだけは光るものがあると思っていた小林製薬。
名前すら一般公募から付けていたと知ったのはつい最近。
となると、後に残るイメージとはいらないものを消費者に「必需品」と錯覚させて売りつける会社。
お部屋の中の気付かない匂いを消臭する消臭元。
存在しない無害のモノの恐怖を煽るマネジメント。
全く悪さをしない手の細菌の恐怖を煽るマネジメント。
ブレスケアをお口の消臭薬と嘘付いて国民生活センターから指導を受ける企業。
いや悪の組織としてはこの上なくご立派

このまま変態御用達の企業として突き抜けてくれれば、軽蔑の1/10くらいは尊敬してやらんこともない。

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posted by 猫耳将軍 at 16:12| Comment(11) | TrackBack(0) | エセ科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ピアス開けて「マキロンで消毒しろ」と言われ、素直に従ったら耳たぶがとろけそうになったことが。

マキロンをあきらめてピアスもあきらめたら、たちどころに耳たぶは元通りでおまけにピアスの穴も御健在。

あの「消毒」ってのは一体何だったんだろう…

いい加減年寄りになったのでそんな大きなけがは最近はしませんが、子供が転んだくらいなら「水道であらっとけ〜」で終わらせてます。
Posted by ちゃつぼ at 2012年03月30日 23:18
うんうん、正論です。
お薬信仰は、まさにどこぞの新興宗教と変わらない麻薬的な魅力がありますからね。
まあ、その新興宗教的な魅力があるからこそ、私達のような業界の人間が生活できるんですけどね。

お薬を信じてくださるのは悪い事ではないですが、間違った方向に向かうのはダメですよね。
Posted by ネーヤ at 2012年03月30日 23:55
一般公募だったなんて(;゜0゜)
ショックです〜。・°°・(>_<)・°°・。
Posted by たまきしゃん at 2012年03月31日 00:47
正しい使い方を突き詰めたら傷に使用できなくなるとはなんたる皮肉w
私も使った事がありますが、説明書の通り10センチ以上離して使うと粉が飛び散って大変でした。
おまけに傷は確かに悪化しましたw
Posted by なたまめ at 2012年03月31日 10:25
>>ちゃつぼ氏
メスや注射針、そしてピアスのような、体内という極めて清潔な場所に触れるものを消毒し、清潔を保つのは当然ながら必要なことです。
しかし、ピアスそのものを消毒するのとピアス穴を消毒するのでは意味合いが全く異なります。
ピアス穴にマキロンをかけるというのは、極論してしまえば切り開いた腹の中にマキロンをぶち撒けるのと同じことです。
切り開いた腹を汚染しないように処置する時に必要なのは、いかに汚染物を触れさせないかであり、その本質はピアス穴でも同じです。
そうでなくても血管があまり通っていない耳たぶは感染に陥りやすく、また感染してしまうと他の部位に比べて自然治癒が困難です。
ピアス穴を開けるのなら、一番気をつけるべきは素手で触らないこととできるだけ髪をふれさせないこと。
そして、化膿してしまったらいったんその穴をあきらめて治療に専念することだと思っています。
Posted by 猫耳将軍 at 2012年04月01日 10:06
>>ネーヤ氏
宗教でも薬でも、信じることを否定はしませんが、無条件で正しいと勘違いした輩は格好のカモです。
何であっても間違いは起きると考え、常にそのリスクと向き合うのは不信心ではなくリスクマネジメントと呼ばれるものです。
リスク管理まで誰かに任せるのでは死人と同じですよね。
Posted by 猫耳将軍 at 2012年04月01日 10:27
>>たまきしゃん氏
たまに募集する程度なら他の企業もやってることなんですがね。
唯一と言ってもいい長所すら努力によるものではなかったというのは何とも。
Posted by 猫耳将軍 at 2012年04月01日 10:34
そもそも存在理由が間違ってるのでどうしようもないのです。
今の商品パッケージにはホワイトパウダーと記載されてるけど、やっぱりどう見ても黄色いんだよねー。
Posted by 猫耳将軍 at 2012年04月01日 11:45
ちょっとひどいヤケドをしちゃって病院にかかってるんだけど、行くたびに茶色い消毒薬を塗られて、ゲーペン?だかゲーベン?だかというクリームをさらに塗られます
どっちも気が狂いそうになるくらい痛いんですが、もしかしてあんなに痛いのにヤケドにはあまり効き目ないですか?
もし効き目がないのなら違う病院で治療したいのですが、その病院でも消毒やウリームがついてきたら....と不安です
ヤケドの範囲が市販の絆創膏サイズではおさまらないので病院に行かなきゃならないのはわかってるんですが
新しい病院に行きつつも消毒やクリームを使われないいい方法はないですか?
Posted by ごんべえ at 2013年03月14日 18:11
そいつは痛かっただろうねぇ。
火傷の深度や範囲に関わらず、消毒やゲーベンクリームは害悪だ。
今でもそんな時代遅れの加持祈祷以下のおまじないをやってる病院があるんだね。
次に行く病院がハイドロコロイド剤を使ってくれるかどうかわからないけど、最初の問診でこう答えるといい。

「消毒薬及びゲーベンクリームに対してアレルギーがあります」

これだけで、少なくともクソ色の火傷悪化液や、悪魔のクリームは使われないはずだよ。
Posted by 猫耳将軍 at 2013年03月14日 19:50
小林製薬は悪だ!!!
Posted by 白米 at 2015年12月14日 01:39
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